2008-12-04

泣き寝入りするしかないのか?-法律21-

 「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」とヴァイツゼッカ-が言ってたので,これまで司法修習を振り返ってみましたが,現在に目を閉ざすと当然,現在は盲目なので,現在の問題について考えてみようと思います。その問題は,学生の内定取消し問題です。

 ある日突然,お目当て(だったかどうかはさておき)の企業から内定取消しを通知されたら,学生は泣き寝入りするしかないのでしょうか?この問題の答えを出すには,内定ってそもそも法律的には何なんだ?というのを明らかにしないといけません。

 内定の法的性質には,以下のような争いがあります。
 
1 締結過程説
 この説は,要するに内定というのは,まだ労働契約の締結過程にすぎないというものです。誤解を恐れず言ってしまえば,まだまだ就活中だということです。なので,内定をもらった学生(以下,「内定者」という。)は,期待権侵害などの不法行為責任を追及するしかないわけです。

2 予約説
 これは,内定を将来の労働契約の予約だと考えるものです。なので,内定者は,予約権侵害の債務不履行責任を追及することになります。

3 労働契約成立説
 文字どおり,内定によって労働契約が成立するという説です。この考えによると,内定者は,解雇の無効を主張して,契約関係の存在確認を求めることができます。

 で,学説がいろいろ言ってますが,実務は判例で動いているので判例はどうかというと微妙な判例があります(判例なのか?)
 判例のポイントは,①内定にもいろいろあるんで,具体的な事案に応じて判断する②今回の事案では,内定により,始期付,解約権留保付の労働契約が成立したというものです。要するに,ケースバイケースだということです。で,始期付解約権留保付というのは,ざっくりいうと,問題なく卒業すれば,4月1日から雇いますということです。

 問題なく卒業と書きましたが,どんなことが問題なんでしょうか?つまり,企業側はどんな場合に解約権を行使できるんでしょうか?
 一般的には①成績不良による留年②健康状態の著しい悪化③虚偽申告が判明④逮捕,起訴猶予処分を受けたことなどです。
 これらは,主に内定者側の事情です。じゃぁ,企業の経営悪化を理由とする内定取消しは認められるんでしょうか(やっと本題)?

 経営悪化を理由とする場合は,整理解雇(リストラ)に準じた取扱がされることになります。で,整理解雇が正当かどうかは,以下の4要素が一定の基準となります。

1 人員削減の必要性
2 解雇回避努力
3 人選の合理性
4 手続きの妥当性

 内定取消しの場合,主に2,4が問題になるんでしょうね。1は,整理解雇の場合は,新規採用をしてるのに,整理解雇する場合に問題になりますが,逆は問題にならないんじゃないかと・・・
 2は,要するに,経費の削減ですね。まずは,企業側で努力しろということです。3は,内定者全員の内定を取り消してるようなので,問題ないですが,一部を取り消している場合は問題となってきます。客観的な基準が要求されます。4は,企業側が説明をちゃんとしたかどうかということです。紙切れ1枚とかだと問題です。

 ここまで,つらつらと書いてきましたが,結論的には,泣き寝入りせずに,いろいろやってみる価値はあると思います。内定式とかやってたら,始期付,解約権留保付労働契約の成立を認めていいように思います(あくまで,ケースバイケース)。

 で,学生側が内定を蹴るのは,問題ないんでしょうか?民法上,労働者はいつでも労働契約を解約できるんで,企業側から地位確認請求を求めることはないんでしょうが,場合によっては,不法行為や債務不履行にあたる内定辞退もありうるところです。その場合は,損賠請求されてもやむをえないでしょう。

 ♪BUMP OF CHICKEN「ギルド」(アルバム:ユグドラシル収録) 

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