2016-02-13

そろそろ議論を始めよう

 アメリカの運輸省が,Google先生が開発中の自動運転車のAIを運転手とみなすと回答したと報道されています。
 日本でも自動運転車は開発されているので,普及する前にいろいろ議論を始めておいた方がいいんじゃないか?と思っています。

 自動運転車で気になってるのは,自動運転車が交通事故を起こして,誰かを死傷させた場合,自賠法3条は適用されるのか?ということ。

 自賠法3条は,運行供用者責任を規定しています。自動車の運行によって人身損害が発生した場合に,自動車の運行供用者(所有者等)に賠償責任を負わせ,被害者保護の見地から立証責任を転換し,実質,無過失責任を負わせています。
 自賠責法3条の適用があれば,被害者は,①事故の相手方等が運行供用者であること,②自動車の運行によって,被害者の生命又は身体が害されたこと,③損害の発生と額,④②と③の因果関係を立証すれば足りるのです。

 ここでの問題は,自動運転が「自動車の運行によって」(運行起因性)といえるのか?という点につきます。そもそも,自動運転車が道路運送車両法の自動車なのか?という議論もしないといけないのかもしれませんが・・・これは省略します。

 運行については,自賠責法2条に定義規定があり,「人又は物を運送するとしないとにかかわらず,自動車を当該装置の用い方に従い用いること」と規定しています。
 判例は,クレーン車を走行停止状態におき,操縦者において,固有装置であるクレーンをその目的に従って操作する場合も運行に当たるとしています(最高裁昭和52年11月24日判決)。
 自動運転車のAIも自動車の固有装置だということはいえそうです。手動運転に切り替えることはできるんでしょうが,自動運転中は,操作はしていないんじゃないか?という疑問が。

 判例は,貨物自動車からフォークリフトを使い荷台上の木材を荷台の反対側に落としたという事案で,荷卸し作業は,直接的にはフォークリフトを用いてなされたものであるが,荷台をその目的に従って使用することによって行われたとして,運行起因性を認めています(最高裁昭和63年6月16日判タ685号151頁)。
 ということは,固有装置を操作している必要はなく,使用していれば足りるということになります。自動運転中も固有装置であるAIを使用しているといえそうです。

 ざっくりと,考えてみましたが,どうやら自動運転車にも自賠法3条の適用がありそうだと思いますが,ちゃんと議論しておかないと,どっちが損害賠償を負担するのか,保険会社と自動車メーカーで揉めるんじゃないかと思ったりしています。

 ♪Mr.Children「メインストリートに行こう」(アルバム:Versus収録)

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