ところで,従業員が新型コロナウイルスに感染してるかもしれない場合に,会社が当該従業員を休ませた場合,給与を支払う必要があるのでしょうか?
【前提】
給与は労務提供の対価なので,労働者である従業員が労務提供をしない場合,給与は支払われません。しかし,従業員が労務提供を行えないのが使用者である会社の帰責事由(故意,過失)による場合は,従業員は会社に対する給与支払請求権を失いません。
①感染症法による場合
2020年2月1日付で新型コロナウイルス感染症が指定感染症とされました。そのため,新型コロナウイルスの感染が確認された場合,都道府県が就業制限等を勧告することができるようになりました。
都道府県知事から就業制限の通知を受けた従業員に対して,会社は出勤停止の措置を行うことになります。法令に基づく出勤停止で,使用者である会社の責任ではないので,ノーワーク・ノーペイの原則により,会社は当該従業員に対し,給与を支払う必要はありません。
②労働安全衛生法68条の適用はない
感染症といえば,労働安全衛生法68条が思い起こされます。
(病者の就業禁止)
第六十八条 事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。
新型コロナウイルスは感染症法の指定感染症なのですが,労働安全衛生法68条の適用はないとされています。
したがって,従業員が新型コロナウイルスに感染しても,都道府県知事から就業制限の通知がない場合,労働安全衛生法68条によって,従業員を出勤停止にすることはできません。
③会社は安全配慮義務を負う
一方,会社は全従業員に対して安全配慮義務を負っています。従業員が新型コロナウイルスに感染している又は感染している蓋然性がある場合に,漫然と当該従業員を出勤させ,他の従業員に感染させたら,会社は安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うことになります。
④休業手当の支払いは必要
以上を踏まえると,新型コロナウイルスに感染した又は感染している蓋然性のある従業員に対して,会社は出勤停止命令を行うことになります。
しかし,従業員を強制的に出勤停止させる法的根拠がないので,会社の帰責事由によるものとして,労基法26条の休業手当の支払いが最低限必要です。
(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
そして,場合によっては,民法536条2項により給与全額を支払わなければならないかもしれません。
(債務者の危険負担等)第五百三十六条 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
♪Mr.Children「さよなら2001年」(アルバム:B-SIDE収録)
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