弁護士等の実務家は,まず,感覚的に違法っぽいなというのがあって,次に,それを理論的にどう説明するか?みたいな思考をすることがよくあります。ということで,違法っぽいなぁ~という感覚を理論的に説明してみようと思います。
検察官の定年については,検察庁法22条に規定があります。
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
定年ではなく,退官という言葉を使ってるんですね。そして,退官を延長する規定はありません。
一方,公務員一般の定年については,国家公務員法81条の2に規定があります。
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
2項以下で,定年は60歳だとか規定しています。「法律に別段の定めのある場合を除き」と規定しているのがポイントです。
で,問題の定年延長の根拠となっている国家公務員法81条の3は,
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
と規定しています。2項では再延長ができると規定しています。 「前条第一項の規定により」と規定しているのがポイントです。
政府見解は,①検察官も一般職の国家公務員だ。②だから,国家公務員法81条の3で定年延長できるという理屈です。
しかし,国家公務員法81条の3第1項は,「前条第一項の規定により退職」する場合に適用されます。ここでいう前条第一項とは,国家公務員法81条の2第1項のことです。ところが,検察官である某検事長は,検察庁法22条の規定により退官します。まさに,公務員法81条の2第1項の「法律に別段の定めのある場合を除き」に該当するわけです。とすると,公務員法81条の3第1項の実質的な要件を検討するまでもなく,「前条第一項の規定により退職」する場合ではないので,公務員法81条の3の適用はないと解すべきでしょう。でもって,検察庁法には退官延長の規定がないので,今回の定年延長は違法だと解すべきでしょう。
もっとも,検察庁法22条は定年の年齢について定めただけで,国家公務員法81条の2の規定自体は適用されるという考えもないわけではないです。しかし,国家公務員法81条の2は,定年に達した日の最初の3月31日に退職するのに対し,検察庁法22条では,定年に達した日に即,退官します。なので,定年の年齢だけ定めたので,国家公務員法81条の2自体の適用はあるというのは,かなり無理筋なんじゃないかと思います。
ただ,今回の定年延長が違法だとして,それを国民が争う手段がないんですよね,たぶん。納税者訴訟が認められれば,正面から争えるんだけど,無理から国賠請求するしかないよなぁ~
♪Mr.Children「フラジャイル」(アルバム:B-SIDE収録)
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