2020-03-07

給与ファクタリングは貸金業に該当

 先日,給与ファクタリングでトラブルが起きてるといった報道がありました。弁護士のMLでも給与ファクタリングの話題がみられます。

 給与ファクタリングの仕組みは,次のようなものです。①給料日前にまとまった金がほしい会社員Aが,ファクタリング会社Xに給与債権を売却します。②Xは,その売却代金をAに支払います。③Aが勤務している会社YがAに給与を支払います。④給与の支払を受けたAはXに給与全額を支払います。
 給与ファクタリングというとおり,給与債権の債権譲渡という形式をとっています。しかし,他のファクタリングと異なり,ファクタリング会社Xが直接,債権を取立てることはありません。そのため,資金の移動だけをみると,貸金と同じということになります。また,給与と売却代金との差額(手数料)が,Xの儲けになるわけです。が,この手数料がヤミ金なみという業者もあり,トラブルになっているというのが,冒頭の報道です。

 そもそも,労基法24条は,使用者は,賃金(給与のこと)を労働者に直接支払わなければならないと規定しています。趣旨は,親方や職業仲介人等が賃金を代理受領して中間搾取することを禁止するためです。
 この直接支払原則は,厳格で,労働者が未成年の場合,その親権者へ賃金を支払うことは禁止されています(労基法59条)。

 給与債権を第三者に譲渡したとしても,使用者は,譲受人に賃金を支払うことはできません。使用者は,あくまでも労働者本人に賃金を支払う必要があります。このことは,債権譲渡に対抗要件を具備していても同様です。

 ということは,給与ファクタリングでは,常にファクタリング会社Xが給与を直接回収することはなく,会社員Aが回収することになります。だとすると,債権譲渡の形式をとってはいても,それは形式だけで,実質は,常に,金銭の交付と返還の合意があり,貸金と何ら変わらないということになります。
 金融庁も,給与ファクタリングは,貸金業に当たるとの見解を出しています。

 ♪Mr.Children「さよなら2001年」(アルバム:B-SIDE収録)

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