2020-03-28

民法の短期消滅時効が廃止されたら,賃金請求権の消滅時効は3年になった

 民法の債権法が改正され,2020年4月1日から施行されます。いろいろ改正されてますが,消滅時効についての改正が大きな改正の一つと言えるでしょう。

 現行の民法は,債権の消滅時効の期間を10年とし,それよりも短い期間で消滅時効にかかる短期消滅時効制度を採用していました。たとえば,月またはこれより短い時期で定めた使用人の給与債権は,1年で消滅時効になります(174条1項)。
 しかし,それでは,労働者の保護に欠けるということで,労基法115条で賃金請求権の消滅時効を2年と民法より長期の時効期間として,労働者の保護を図っていました。つまり,一般法の民法より,特別法の労基法の方が消滅時効の期間を長くしていたのです。

 債権法の改正で,この短期消滅時効が廃止されて,債権の消滅時効は一律,①主観的起算点から5年,②客観的起算点から10年と統一されました。債権法改正の時点では,労基法115条が改正されませんでした。その結果,特別法である労基法の方が,一般法である民法よりも消滅時効の期間が短いという逆転現象が起きました。

 そんな中,3月27日に,ようやく改正労基法が成立しました。賃金請求権の消滅時効は5年になると思いきや,3年になります。2020年4月1日以降に発生する賃金は,消滅時効期間が3年になります。
 あれ,逆転現象が解消されてない…なんでも,使用者側から賃金台帳を長期間保管する負担が重い等の意見が出て,それを反映したそうです。労基法では,賃金台帳の保管期間が3年なんで,3年ならいいだろうと。
 一応,当面の間の措置で,5年後に見直すことにはなってるんですが,訴訟になったら,争われるんじゃないかと思いつつも,理論構成がなかなか難しいなと。

 ♪Mr.Children「さよなら2001年」(アルバム:B-SIDE収録)

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