2010-07-06

理論的には,セーフですが,実際は・・・

 法律を勉強していておもしろいのは,しばしば意外な結論に出くわすことなんじゃないかと思っています。で,そんな意外な結論って,わりと盛り上がれるんで,ブログのネタとかにはよかったりするなじゃないかと思います。

 以前に書いた法学部生は友だちをなくす―法律27―を少し読み返してみてください―とはいえ律儀に読み返す必要はないんですが・・・―。
 気にかかる―引っかかる―表現があるんじゃないかと思います。無銭飲食が犯罪じゃないかのような記述になっていますが,誤解される人もいると困るので,少し掘り下げてみようと思います。

 無銭飲食は,通常,詐欺罪に該当します,立派な犯罪です。当然,実刑もありえます。ですが,こんなケースはどうでしょう?①お金を持っていると思い込んでた,②お金を持っていると思い込んでいるんで,普通にごはん屋さんで,注文し食事をした,③会計をすませようと席を立とうとしたところで,財布がないことに気付いた,④レジを見ると,会計待ちの客が群れていたので,まぎれてフェイドアウトしてみた。
 このケースは,実は無罪です。
 関連する条文は刑法のこちら。
 
 第二百三十五条  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 
 (詐 欺)
 第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
 2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 ①~④の間に行為者は誰もだましていません。結局,お金は持ってなかったんですが,払う気満々だったんです。なので,詐欺罪は成立しません
 では,窃盗罪が成立するかというと,詐欺罪のように,「財産上不法の利益を得た云々という条文がありません。今回のケースでは,行為者は食事代金の支払いという債務を免れたということで財産上不法の利益を得たことになるんですが,それを処罰する条文がないんです。
 よって,無罪という結論になります。

 しかし,これはあくまでも「理論上は」という話です。今回のケースが実際に起こった場合に,結果的にお金は持ってなかったケド,当初は持っていると思っていたので払うつもりだったなんて言い分が通るかどうかが大問題です。非常に苦しい言い訳だ!というのが常識人の考えなんじゃないかと思います。こいつ,全然反省してないじゃないか!?と。だったら,最終的に裁判官もそう判断するんでしょうネ。

 なんだかまとまりのない話―解説をだいぶはしょったんで―でしたが,よくわからなかったという人は,無銭飲食はしてはいけないというのが,この話の寓意―当たり前の話―くらいに思ってくれればいいです。もう一歩踏み込んで,刑法の勉強をしてみようなんて思ってくれる人がいるとすれば,やりすぎましたネ・・・

 ♪BUMP OF CHICKEN「ガラスのブルース」(アルバム:FLAME VEIN +1収録)

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