2020-06-22

自動車の任意売却に裁判所の許可がいらない理由

 破産管財人は,破産財団を換価するのが中心的な業務です。ただし,自由に換価していいわけではなく,裁判所の許可が必要な場合があります。
 大阪地裁の破産手続開始決定をよく見ると,「破産管財人は,次の各行為については,当裁判所の許可を得ないでこれを行うことができる。」と定められています。そして,「次の各行為」の中に,自動車の任意売却が挙げられています。

 このように,大阪地裁では,破産管財人は自動車の任意売却を裁判所の許可なしに行うことができます。以前,その根拠は何?と聞かれ,調べたことがあったので,書いておこうと思います。

(1) 動産の任意売却には裁判所の許可が必要

 大前提として,破産管財人が動産の任意売却を行うには,裁判所の許可が必要です(破産法78条2項7号)。

 

2 破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。

  七 動産の任意売却


(2) 100万円以下の動産の任意売却は裁判所の許可不要

 動産といっても,ピンからキリまで存在します。動産の任意売却に常に裁判所の許可が必要だとすると,100円の動産を売却するのにもいちいち裁判所の許可を得なければならず,管財人の換価業務に支障をきたす恐れがあります。

 そこで,100万円以下の動産の任意売却については,裁判所の許可を不要としています(破産法78条3項1号,破産規則25条)。 

 3 前項の規定にかかわらず、同項第七号から第十四号までに掲げる行為については、次に掲げる場合には、同項の許可を要しない。
 一 最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき。

  で,破産規則25条は,その価額は100万円と規定しています。

(3) 100万円以上の自動車の任意売却も裁判所の許可不要

 (2)で100万円以下の自動車の任意売却には,裁判所の許可は不要となりました。破産法はさらに例外について規定しています。破産法78条3項2号によって,100万円を超える動産の任意売却であっても,裁判所が許可不要としたものは,裁判所の許可を不要にできるのです。 

 3 前項の規定にかかわらず、同項第七号から第十四号までに掲げる行為については、次に掲げる場合には、同項の許可を要しない。
 二 前号に掲げるもののほか、裁判所が前項の許可を要しないものとしたものに関するとき。

 ということで,以上の結果,大阪地裁では,破産管財人は,100万円を超える自動車の任意売却であっても,裁判所の許可を得ずに行うことができるのです。

 ♪Mr.Children「メインストリートに行こう」(アルバム:Versus収録)

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