2019-01-21

必ずしも違法とまでは言い切れないんだけどネ

 忘れた頃に少しだけ,更新される青天霹靂にわか雨です。先日,Tポイントカードのポイント履歴やレンタルビデオの利用履歴といった情報を捜査機関に令状なしに開示されていたことが,一斉に報じられています。

 一連の報道は,令状なしに開示するなんてけしからんという方向性で報じられているきらいがあります。

 まず,捜査機関が令状なしにポイント履歴等の開示を求めたのは,刑訴法197条2項に「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と規定があり,この規定に基づいています。捜査関係事項照会です。
 刑訴法は,「できる」と規定しているだけですが,報告を求められた照会先は,原則,報告すべき義務を負うと解されています。ただし,報告を強制する手段は存在しません。 この点,日本図書館協会のHPは参考になります。

 個人情報保護法は,本人の同意がない場合の個人データの第三者提供を原則,禁止しています。例外的に法令に基づく場合,本人の同意なしに個人データの第三者提供が許容されます。法令に基づく場合には,情報提供することが義務付けられてはいないが,法令に具体的根拠のある場合も含むと解されています。

 Tポイントカードのポイント履歴等の開示については,刑訴法197条2項の捜査関係事項照会という法令に基づいて,捜査機関に個人データを提供しているので,必ずしも個人情報保護法23条1項に違反するわけではないと考えられます。
 一連の報道で,この点に言及している報道は,確認した限りではなかったと思います。現行法では,必ずしも違法といえないと言及した上で,以下の点を議論すべきではないかと思っています。

 GPS捜査のように,ポイント履歴をたどることで,その人の行動をかなり厳密に把握することが可能になります。プライバシー侵害の大きさから,任意捜査で許容されるのか,令状が必要な強制捜査なのではないか?という議論は必要でしょう。
 また,前述の日本図書館協会のように,多数の顧客のビッグデータを保有する企業が,個人データを漫然と捜査機関に開示してもいいのか?という議論も必要でしょう。

 ♪Mr.Children「fantasy」(アルバム:REFLECTION {Naked}収録)

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