2016-08-06

単なる精神論だといっても過言ではない

 那覇地裁に殺人,強姦致死等で起訴された元海兵隊員が,那覇地裁から東京地裁へ管轄裁判所を移送するよう求めたという話しを6月に書きました(実際は,何やったの?)。この事件で,最高裁が請求を棄却しました。

 先の記事でいろいろ書きましたが,結局,刑訴法17条1項2号に基づく請求でした。請求棄却なので,裁判員裁判が制度として公平な裁判所において法と証拠に基づく適正な裁判が行なわれることを十分保障しているとしています。
 が,その制度的保障は,裁判員一人一人の心構えにもっぱら依拠しているような気がしていて,制度的保障とはいえないんじゃないか?と思いたくなるような書きっぷりで。特に千葉裁判官の補足意見なんか,精神論なんじゃないか?

 ちょっと引用しておきます。

 まず,法廷意見です。

 ①「裁判員裁判対象事件を取り扱う裁判体は,公平性,中立性を確保できる
よう配慮された手続の下に選任された裁判員と,身分保障の下,独立して職権を行使することが保障された裁判官とによって構成され」る。
 ②「裁判長は,裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない」。
 なので,「公平な裁判所における法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されている」んだって。

 補足意見は,こんな感じ。
 ①「裁判員は,法令に従い公平誠実にその職務を行う義務を負っており,裁判長は,裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮すべきこととされており,実際もそのような運用がされている」。
 ②「裁判員とすれば,被告人に個人的な体験等に基づく強い憎悪感や逆に揺るぎない同情ないし好感情を抱いているような例外的な場合でない限り,裁判員としての基本的な義務を放棄し,公平な審理,判断を行う努力を怠るような態度に出ることは考え難い」。
 ③「認定事実は,具体性を帯び,マスコミによる報道内容や風評等から離れ,動かし難い圧倒的な重みを有したものであり,裁判官も裁判員も,それに正面から対峙する」。
 ④「事件の背景等についての証拠に基づかない裁判員の個人的な感情や予断等が入り込む余地のない厳粛な『裁きの場』なのであって,そのことは,国民全体の共通の認識」なんだって。
 ⑤「裁判員には,証拠に基づかない私的な感情を排した冷静な審理への参加が求められており,各人がそのような自覚の下に,裁判員裁判の制度を裁判官と共に築き上げていく責務があ」る。

 制度的保障ねぇ~
 

 ♪Mr.Children「Heavenly kiss」(アルバム:B-SIDE収録)

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