2016-07-05

実際は,何やったの?

 那覇地裁に殺人,強姦致死等で起訴された元海兵隊員が,那覇地裁から東京地裁へ管轄裁判所を移送するよう求めたというニュースがありました。
 ニュース記事によると,最高裁へ請求したとのこと・・・えっ!?いきなり最高裁?ってことで,この手続き気になったんで,ちょとだけ調べてみました。

 刑訴法には,こんな条文があります。

第十七条  検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。
 管轄裁判所が法律上の理由又は特別の事情により裁判権を行うことができないとき。
 地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞があるとき。
○2  前項各号の場合には、被告人も管轄移転の請求をすることができる。

 おっ,17条2項に基づいて管轄移転の請求をしたっぽいなと思ったんですが,請求は,直近上級裁判所にすることになります。那覇地裁の直近上級裁判所は,福岡高裁(那覇支部)なんで,17条2項に基づく請求じゃないわけだ。

 刑訴法に他にあるとすると,
第十八条  犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最高裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。
 
 なんですが,請求できるのは,検事総長だし・・・
 う~んと,わかんなくなったところで,別の記事を見ると,那覇地裁へ請求したとか書いてある。いや,那覇地裁でもダメじゃん・・・
  刑訴法上の手続きじゃなくて,実は,単なる嘆願だったりするんじゃないだろうか?とまで思っていたのですが,どうやらそうじゃない。

 17条の直近上級裁判所は,当然ながら,自分の管轄外の裁判所へ,移転することはできません。なので,福岡高裁管内のすべての地裁でも同様に17条1項の事由があるのであれば,管轄移転について判断できるのは,最高裁しかないということになります。
 なので,請求の仕方によっては,最高裁にということも十分あり得るわけです。結局,ニュース記事を総合すると,17条2項に基づき,最高裁宛の管轄移転請求を那覇地裁にしたってこと?

 ♪Mr.Children「ラララ」(アルバム:DISCOVERY収録)

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