2019-01-25

控訴理由書と上告理由書

 某著名事件の国賠訴訟で,弁護団が上告理由書の提出期限を徒過していたことが,ニュースになりました。そこで,民事訴訟の控訴理由書と上告理由書について,備忘録的に書いておきます。

 一審判決に不服のある場合,控訴することになります。控訴は,一審裁判所に控訴状を提出することになります。控訴期間は,一審の判決書の送達を受けた日から2週間以内で,その間に控訴状を提出する必要があります。
 控訴状に,一審判決の取消しや変更を求める理由を具体的に記載することも民訴法上,認められていますが,実務上は,別途,控訴理由書を作成し,控訴理由書に具体的な理由を記載しています。控訴理由書は,控訴審裁判所に提出し,その提出期限は,控訴提起後50日以内とされています。
 2週間の控訴期間を徒過してしまうと,もうどうしょうもないのですが,控訴理由書の提出期限を徒過しても,そのことから,控訴が棄却されるわけではありません。実務上は,控訴理由書の提出期限をすぎた後に提出された控訴理由書も有効なものとして扱われています。

 控訴審の判決に不服がある場合は,上告することになります。上告は,上告状・上告受理申立書を控訴審の裁判所に提出します。上告期間は,控訴審の判決書の送達を受けた日から2週間以内です。
 上告状・上告受理申立書に具体的な理由を記載することもできますが,実務上は,上告理由書・上告受理申立理由書を作成し,具体的な理由を記載しています。
 上告理由書・上告受理申立理由書は,控訴審の裁判所に提出し,提出期限は,上告提起通知書・上告受理申立通知書の送達を受けた日から50日以内です。
 控訴理由書の場合と異なり,この提出期限を徒過してしまうと,上告・上告受理申立は,いずれも却下されてしまいます。

 ♪Mr.Children「ランニングハイ」(アルバム:I U収録)

2019-01-21

必ずしも違法とまでは言い切れないんだけどネ

 忘れた頃に少しだけ,更新される青天霹靂にわか雨です。先日,Tポイントカードのポイント履歴やレンタルビデオの利用履歴といった情報を捜査機関に令状なしに開示されていたことが,一斉に報じられています。

 一連の報道は,令状なしに開示するなんてけしからんという方向性で報じられているきらいがあります。

 まず,捜査機関が令状なしにポイント履歴等の開示を求めたのは,刑訴法197条2項に「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と規定があり,この規定に基づいています。捜査関係事項照会です。
 刑訴法は,「できる」と規定しているだけですが,報告を求められた照会先は,原則,報告すべき義務を負うと解されています。ただし,報告を強制する手段は存在しません。 この点,日本図書館協会のHPは参考になります。

 個人情報保護法は,本人の同意がない場合の個人データの第三者提供を原則,禁止しています。例外的に法令に基づく場合,本人の同意なしに個人データの第三者提供が許容されます。法令に基づく場合には,情報提供することが義務付けられてはいないが,法令に具体的根拠のある場合も含むと解されています。

 Tポイントカードのポイント履歴等の開示については,刑訴法197条2項の捜査関係事項照会という法令に基づいて,捜査機関に個人データを提供しているので,必ずしも個人情報保護法23条1項に違反するわけではないと考えられます。
 一連の報道で,この点に言及している報道は,確認した限りではなかったと思います。現行法では,必ずしも違法といえないと言及した上で,以下の点を議論すべきではないかと思っています。

 GPS捜査のように,ポイント履歴をたどることで,その人の行動をかなり厳密に把握することが可能になります。プライバシー侵害の大きさから,任意捜査で許容されるのか,令状が必要な強制捜査なのではないか?という議論は必要でしょう。
 また,前述の日本図書館協会のように,多数の顧客のビッグデータを保有する企業が,個人データを漫然と捜査機関に開示してもいいのか?という議論も必要でしょう。

 ♪Mr.Children「fantasy」(アルバム:REFLECTION {Naked}収録)

今さらながら,都構想の根拠法を見ておこう

  大阪市を廃止し特別区を設置するいわゆる大阪都構想の2度目の住民投票が11月に行われます。前回の住民投票は僅差で否決されましたが,今回はどうなるんでしょうか?  そんな大阪都構想の是非は,いったん置いといて,その根拠となっている大都市地域における特別区の設置に関する法律の条文を...